「イスラムへの回帰」をかかげているエルドアン大統領が統治するトルコで「世俗派」とみられる軍がクーデターを起こしました。

「イスラムへの回帰」が保守的で、「世俗派」がイスラム教に頼らず自由な考えで、西欧文明よりです。

保守的で、独裁者と呼ばれるエルドアン大統領を倒せばいいじゃないか、と思えてしまいますが実は比較的景気の良いトルコ国内では、エルドアン大統領の人気はそう悪くないのです。

いま現在、7月16日の午前10時すぎです。

すでに「終息した」というニュースが流れる中、まだトルコの首都アンカラのライブ映像では、人々が走り回っており、いまだ全貌はつかめていませんが、今の時点で分かっていることをお伝えします。

Hindustan Timesは、インドのニュースサイトですが、ここが世界では早い報道だったようです。

アンカラで銃撃とのことで、この時点ではまだ詳しいことはわかりませんでした。

（ほかの人は知っていたかもしれませんが）
Hindustan TimesのURLはこちら
http://www.hindustantimes.com/

その後、続々とCNNなどが報道し始めましたが、日本では深夜ということもあり、朝起きて知ってびっくりした人も多いのでは。

トルコ軍が「国を掌握した」とクーデター成功宣言を出したのは、日本時間の午前4時ごろのことです。トルコの首都、アンカラの時間では前日15日の22時でした。

そしてトルコ国営テレビが閉鎖され、現地からの情報はインスタグラムやTwitter、動画投稿などに頼ることとなります。

朝目覚めるころ、地上波テレビでもトップニュースとして取り上げられました。現地の様子も流れ始め、事態の深刻さがひしひしと伝わってきます。

こちらは、Hindustan Timesのツイート。

クーデターを起こした軍側のヘリコプターが撃墜されたとの報道があり、気の早いメディアでは「鎮圧された」「終息した」と書かれています。

情報が交錯していますが、だいたいこのような流れでした。

トルコ軍の一部がクーデターを起こしました。

・16日3：56頃「トルコの首都アンカラで銃撃」と第一報
・トルコ軍がボスポラス海峡にかかる橋を封鎖と報道
・同4時ごろ「イスタンブールの空港で戦車を目撃」Hindustan Times
・ユルドゥルム・トルコ首相「反乱は鎮圧している」「クーデターとは呼べない」
・同4：30頃　トルコ軍が「国を掌握した」と声明
・16日6時過ぎトルコの政府系テレビが「軍がクーデターでトルコを支配下に収めた」と発表。軍に命令されて読み上げていると明言。
・6：40頃　エルドアン大統領がCNNのインタビューに答える(バカンス中だったらしい）
・8時頃　エルドアン大統領、ドイツに亡命希望か？
・9時すぎ　クーデター軍に対し、国の制圧が成功しつつあるとの報道
（与党AKPを中心にクーデター阻止を国民に呼びかけています）

※トルコには、大統領と首相がいます。

11時近くになり、エルドアン大統領の居場所がわかりました。バカンス中だったらしい場所は不明でしたが、いったんイスタンブール空港に着陸しようとしたとの報道もありました。

しかし、結局エーゲ海で会見が行われることになったようです。

エルドアン大統領は
「事態を掌握している」
「クーデターは成功しないと確信している」
と話しました。

独裁ともいわれ、保守的な考えを標榜し、トルコの英雄ケマル・パシャに反すると、クーデター側は考えているのでしょうが、エルドアン大統領の経済政策は上手くて、このところのトルコのGDPもうなぎ上りです。

国民の気持ちになれば、多少の独裁なら我慢できるほど、生活が豊かなら良いはずです。

また、政府軍もいつも迫ってくるクルド人の軍と戦っていて精鋭揃い。

果たしてこのクーデター、成功裏に終わるのでしょうか。疑問です。

トルコは共和制を敷く共和国。

クルド人、アルメニア人、ギリシャ人、ユダヤ人を中心に各国の人も暮らしています。人口の多くを占めるのがクルド人。またイスラム教を信仰する人が多いのですが、スンニ派とアレヴィー派に分かれています。

信仰ひとつとっても、たいへん複雑な国だということがわかります。

中東の国なのに、石油が出ません。そこでロシアなどの産油国からの輸入に頼っています。本当は、あまりロシアと険悪になりたくないのです。

経済的には「内需の国」で、自国で生産された商品を自国民が購入して回っている経済です。主な輸出品は自動車部品。これが意外ですよね。

隣接する国々からも干渉を受けやすく、昨今ではISのテロ攻撃も受けています。

甘くておいしいお菓子や、イスタンブールの夜景という素敵な面もある一方、結構大変なところなのです。

さきほどちらっと書いたトルコの英雄、ケマル・パシャについてです。

このケマル氏が共和国宣言を出したのが1923年です。

トルコという国は、地図をみるとすごいかわいそうな場所にあります。シリア、イラク、黒海に囲まれて、中東問題がどこかでちょっと起きれば、影響を必ず受けます。

ケマル氏はイタリヤやフランスの軍と戦い、次々と勝利を収め、トルコの初代大統領となりました。今でも「建国の父」と言われています。現代にもケマル氏を尊敬する国民がいるのですね。

ケマル氏の考えは「世俗主義」といい、イスラム教独特の風習を捨てさせてしまいました。そのかわり「ひとつの宗教に頼らず、トルコ国民としての自覚」をみんなが持つことに成功しました。

トルコ帽の禁止など日本人からすると「そこまでしなくても良いんじゃない？」と思えるのですが、その時代には必要だったのでしょうか。

しかし、これに反発する勢力も居て、エルドアン大統領も「イスラムへの回帰」を掲げて選挙に当選しました。イスラム教に親しみを感じる人が多いのですね。

エルドアン政権が安定して続いていたように見えましたが、水面下では英雄ケマルに憧れ世俗主義を取り戻そうという人も居たのです。

軍にエルドアン大統領の反乱分子が多いと書いてあるところもありますが、内情がものすごく複雑で、一概に言えません。

今回も、トルコ軍の長官はまったく関わっておらず、軍内部の一部の反乱分子のしわざだということです。

ギュレン氏とは、「尊師」とも呼ばれる学者さんです。

米国在住ですが、その思想はトルコの若者にも多大な影響を与えています。

「世俗主義とイスラム教の考えは矛盾しない」と言い、新しい市民運動のリーダーです。

今回、そこらじゅうで「このクーデターの首謀者はギュレン氏ではないか」と言われているのですが……。

私見ですが、ギュレン氏が企てたのではないと思います。違っていたらすみません。また、ギュレン氏本人が「クーデター首謀を否定」したと報道されています。

トルコ在住の日本人は、2,000人といわれています。巻き込まれていないのでしょうか？

逮捕者が120人出たと報道されています。この中に日本人はいないでしょうけど……。

安倍首相も声明を発表しています。

外務省も、日本人の犠牲者がいないかどうか調査中とのこと。

これを書いているうちに正午になってしまいました。この時点で、日本人の死者の報道が見つかりません。

現在、エルドアン大統領側と、クーデター軍側の意見が対立したまま、まだイスタンブールでもアンカラでも混乱が続いているようです。

（2016年7月16日12：03）