みなさん、本日はお忙しい中、これだけ、これだけ、多くのみなさまにお集まりいただきまして本当にありがとうございます。心から感謝しております。

　４月６日は４０歳の誕生日です。本来であれば、みなさんに明るく楽しくお祝いしていただく予定でしたが、今回の不祥事によって、お祝いしていただくような立場ではなくなってしまいました。

　この会を中止することを何度も考えました。しかし、本当に多くのみなさんから温かいメッセージを下さいました。「誰にでも失敗はある」「会えるのを楽しみにしているから」「こういう時こそ開催しよう」と言っていただきました。みんな応援をして後押しをしてくれました。そうした声に支えられてきました。

　しっかりとみなさんの前できちんと今回の騒動をおわびして、カツを入れていただく。そういう場にしたい、開催したいと決断しました。不謹慎とお考えの方もいるでしょうが、浮ついた思いではなく、明日から人生の後半戦。その再生の場となるよう、新たなに生きていく誓いの場としたく思いました。正直、恥ずかしいです、つらいです。しかし、前に進んでいきたいと思います。足を運んでいただき、ありがとうございます。

　今回、報道されているように、私は取り返しのつかないような過ちを犯しました。以前から、妻にはこうした過ちを打ち明け、謝罪し、妻が許してくれ、もう１度、夫婦として、家族としてやり直そうと言ってくれました。決して簡単に償えるようなことではありませんが、もう１度、夫婦として向き合い、歩んでいきたいと思います。

　先日から様々な報道がされています。多くは真偽が定かではない、虚偽を含んだものばかりで、大変困惑しております。もちろん私自身の不徳の致すところですが、誠心誠意、おわびしたいと思います。事実ではないことで報道され、これ以上、家族が苦しむことはとても耐え難いことです。

乙武洋匡とは何だったのか。この２週間、いろいろ考えました。本当に多くのみなさんの期待を裏切ってしまったな、深く反省をしております。

　２つあります。１点目は２２歳、大学３年生の時、五体不満足が出版されそれ、以来、明るくさわやかな「オト君」とのイメージを抱かれてきました。ごく普通の大学生活を送った私には、それが虚像で重荷に感じてました。自分はそうではない。そんな思いから、テレビ、新聞の取材を受け、くだけて柔らかい自分を強く打ち出すようにしました。ところが、そう言った部分はカットされ、「ああ、求められてないのだな」と。こうしたことが何年も続き、私は世間が期待する乙武を演じるしかなくなってしまいました。

　しかし、私も生身の人間で、何とか本当の自分を分かって欲しい。そんな思いがプライベートの場で強く出てしまいました。堅苦しい真面目な乙武しか知らない皆さんは、親しみやすいね、とか、好意的に受け止めて下さる方が多くて、私はすごく心地よかった。ああ、こうやって自分をさらけだしても受け止めてくれる人がいるんだ、と。もっと理解して欲しい、と。もっと自分を受け入れて欲しい。そんな思いで過剰な演出をしていくようになりました。しっかりと社会で求められる役割を果たす。そうした反動が弱さとなって出ていってしまいました。

　もう１つは乙武さんと言えば、障害を乗り越えた強い人と言われますが、しかし、乗り越えられていなかったのだと思います。確かに私は五体不満足で出して、結婚して、しばらくこうした体に生まれ悲観したことはなく、思春期でさえ、親を恨んだことも、食ってかかったこともありませんでした。むしろ、こうした体でも感謝しておりました。

　初めてつらいなと思ったのは、結婚して７年目。我が家に待望の長男を授かってからでした。あれだけ、待ち望んでいた子供に私は、何もしてやることができませんでした。オムツも替えられません。風呂にも入れられません。着替えも、泣いている我が子を抱きかかえて、あやすこともできません。

　生後半年、ある夏の暑い日でした。長男がハイハイをして扇風機に近づき、指を入れそうになりました。危ない。そう思って息子を抱きかかえて、事なきを得るのでしょう。でも、私にはそれができませんでした。

　大声で妻を呼んだものの、揚げ物をして手が放せない。自分のこの短い手を差し入れ、体をひっくり返して長男を扇風機から引き離しました。受け身をできなかった彼はあおむけにひっくり返り、泣き出しました。そこに妻が来てくれて、「ヨシヨシ」と抱きかかえてあやしてくれました。その姿が、その光景が、本当に、情けなくて…。父親として何もしてやれない。これで父親と呼べるのか。

　今まで障害を克服してきた乙武さん。そんな呼ばれ方をしてきましたが、家にいれば、自分が障害者、自分が無力の存在であることを突きつけられ、本当に惨めな気持ちになっていった。そこで私は家庭から逃げてしまった。ちっとも将来と向き合うことができていなかった。弱さです。自分の抱かれたイメージからも障害からも逃げて、自分も甘やかしてきた結果が、すべて今回のことにつながっています。

　本当に情けない男です。しかし、そんな情けない男でも、もう１度、妻が期待をして信頼をしてくれました。２度と、同じ過ちを繰り返さず、弱い自分と決別をして、人生の後半戦をスタートしていきます。生まれ変わる、という言葉は簡単に口にできる言葉ではありません。それぐらい決意と覚悟を持って生きていきたいと思います。もう１度、私を信じて、もう１度、期待をかけて下さる皆様のために、しっかり歩んでいきます。ありがとうございました。

よっ立派立派！

奥さんのあいさつは立派でした