イングレスのときにも生じていた出来事です。ポーランドのアウシュビッツやベルリンの「つまずきの石」などでポケモンGOを巡るトラブルが発生することを未然に防ぐために運営会社にプレー領域から外してくれと市や施設関係者が申請した模様です。

もちろんスマートフォンを通さないとバーチャルな空間は現れませんから現実的には何の問題もないわけですが、実際にはポケモンGOによって空間の情報が上書きされてしまってます。そしてデバイスをもってる人が訪れれば、その空間の情報を読み込めるわけです。ゆえに「空間の情報」をコントロールしたい、戦死者の慰霊や歴史的空間の意味を維持したいと考える管理者からすれば頭の痛い事案ですし、そこを訪れる人々からすれば「ゲームとかやってないでよ・・・」と思うわけです。

学校でゲームをするな／電車で携帯で喋るな／お葬式で笑うな。こういったルールはある程度の常識として子供の頃から身体に叩き込まれているものです。こうしたルールによって空間や場のもつ情報や特性が維持され、ある種の儀式的な空間がつくり出されてきたわけです。TPOってやつですね。

任天堂の宮本さんも「呼びかけ」を行ってます（『アウシュビッツでポケモンハントしないでください』）。最終的には倫理とかモラルの問題だとは思いつつも。やはり「一帯の電子情報をキャンセルさせる」技術的な対抗策みたいなものがいつかは導入されざるをえないのでしょうか？

一方で、グラフィティなどを愛好する人々はポケモンGOの登場以前から都市や世界をウロウロとうろついてはこっそりと表現されていた作品たちを探し出し（採集し）、カメラ等で収集してきたよという記事です。つまりデバイス抜きでも空間の情報を読み取れる人々にとっては世界は常に多層的であったのだというお話。

さらにいえば街や世界をポケモンを探して歩き回り、ポケストップの位置を確認して回るうちに、今までは気にもとめてはいなかった街や世界の新しい姿（グラフィテイだけではなく通りの風景等も含めて）を再発見することができるかもしれません。風景の再発見としてポケモンGOが役立つってことですね。

先ほどの記事にも同じようなことが書かれてます。

とはいえポケモンGOがやはり面白いのは、現実にはいないような可愛らしい生物たちがそこかしこにウロウロとしていて（たとえばこの猫との偶然の画像を見ればわかるように）これまでの世界では起こりえなかったようなカップリングが身近に簡単に発生しているってことなんだろうと思います。

今回はポケモンGOのプレイを巡る記事というよりは、現実空間の多層化という少し遠回りの視点からの記事でした。最早ゲームだけにはとどまらず、世界の見え方やあり方を変えてくれている新たなメディア。ポケモンGOは現実の世界の情報配置をどのように弄り続けてくれるのでしょうか。楽しみです。